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SANCTUARY公式ブログ "Engineering&Passion"

ゼッケン39 最後の挑戦 (その5)

空冷Zのノーマルフレームをベースにしたマシンで 戦う事は険しい。

そんなクラスが TOTには1つだけ存在する・・・

 

筑波サーキットを一周59秒台でラップ出来ても、全く歯が立たない

最強・最速の 頂点が在るのだ・・・

 

 

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空冷Z系のフレームは 1970年代に生誕したもので、現代の

スポーツバイクの構造とは 全くもって異なる資質である・・・

 

エンジンを基準に見て、スイングアームピボット部は かなり上に

位置しており、クランクケースの前後寸法が大きい事から 併せて

ピボット位置が後ろにあり、結果 スイングアーム長が短くなって

17インチタイヤには不可欠な要素、トラクションが掛かりにくい

構造となっている。

 

そもそも 17インチホイール車として設計されていないのだから

致し方ないのだが、不適合な部分は これだけではない・・・

 

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エンジンから遠く離れた ステムヘッドパイプ位置・・・

むしろこの部分こそが 最も17インチホイールに適合していない

要素であるとも言える・・・

 

適切な表現かどうかは別にして、簡単に言えば アメリカンバイクの

フレーム そっくりなのだ。

 

実際 今のスポーツバイクのフロントフォーク長が760mm前後で

あるのに対し、空冷Z系は最低でも800mmの長さが必要になる。

 

「高くて 前にある、ステムヘッド」

まずこの点を解消しない限り、どうしても飛躍的な進化を果たす事が

できない。

 

加えて・・・

 

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フレーム単体時でのキャスターアングル測定値が26度と、かなり

開いているから、ある意味 流してクルージングする時の乗り心地は

良いものの、スポーツライディングには 元々向かない設定である。

 

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攻撃力強い ハイスペック17インチタイヤを生かそうとするなら

適したフレームジオメトリの マッチングが不可欠・・・

 

「低くて 後ろにある、ステムヘッド」

フレーム単体時でのキャスター角も 26度から25度に直された

Zレーサー3号機のフレームは、RCM USA A16の物であり

アメリカンではなく、生粋のスポーツバイクフレームである。

 

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スイングアームピボット部とて、当然 進化している・・・

 

総削り出しにて製作されたピボットブラケットは もちろん

それだけで高剛性・・・

だが、それだけが利点ではない・・・

 

リア17インチ化に伴う アンチスクワット効果を抑制するべく

ノーマルフレームよりも ピボット位置を10mmローダウンし

高剛性なワイドスイングアームに併せて ピボットシャフト径は

ノーマルの φ16から φ20へと 大径化されている。

 

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シャフト径が大径化されたのは、アームピボットだけではない・・・

 

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Z系ノーマルフレームで 最大の泣き所であるステムシャフト寸法も

現行SSマシンと同じ径にまで 大径化され、ステムベアリングも

あわせて大型の企画品を採用・・・

 

車体を取り回しただけでも 十分にわかるのだが、A16は本当に

軽く転がる車体・・・

Zのノーマルフレームとは あきらかに「軸」の企画が異なっており

それは取り回した者を 驚かせる車体である。

 

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過激なフルブレーキングの連続にも負ける事がない ステムヘッドと

そのシャフト剛性・・・

 

メンテナンスのたびに、ステムベアリングレースが落ちるなんて事は

もはや皆無である。

 

Zレーサー2号機から受け継いだシャシーは、ここに来て更なる

高い完成度へと至っているが、フレームの優位性だけで 太刀打ち

できる様な生易しいものではない・・・

 

有り余るエンジンのトルク&パワーがあって 初めて勝負になるから

パワーユニットの性能 ありきとも言えるのだ。

 

だが、空冷エンジンには 水冷エンジンよりもはるかにライフが

短いと言う 決定的弱点がある。

 

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ちょっとでも無理をすれば、即 故障・・・

 

一般のコンプレッションゲージでは振り切って 測定不能なほどに

高圧縮化された燃焼室は 常にリスキーで、空冷はとにかく・・・

溶けるのだ・・・

 

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ピストンの一部が欠損 あるいは溶けると言った現象は、茶飯事だが

トルク&パワーを求めるなら、高圧縮化はさけて通れない・・・

 

大きな舞台で戦い抜けるエンジンが必要なのだが、同時に壊れない

エンジンでもある事・・・

 

言うは易し・・・                 険しい道のりだ・・・

 

 

 

 

ハーキュリーズ & スーパーモンスターエヴォリューションクラスは

水冷エンンジン最速 & 空冷エンジン最速の、2クラス混走クラス。

 

当然の事ながら2クラスのマシン性能差は、尋常なものではない。

 

 

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この10数年 この混走2クラスを見て来て感じたのは、とにかく

空冷スーパーモンスターエヴォは ハーキュリーズの引き立て役に

なってしまったと思える点・・・

 

水冷エンジンと 空冷エンジンとでは、埋めようのない差が存在し

それはもう それこそ、圧倒的なエンジンパワー差である。

 

以前はその混走2クラスを公平に分けて、別々で開催して欲しいと

願っていたものだが、今となってはもう それもどうでも良い事・・・

 

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パワーとライフを求めて ウォータージャケットをその身にまとった

訳だから、マシンの水冷化は正当な進化である・・・

 

最強・最速の名を冠したクラスなだけに 徐々に水冷マシンが増加し

空冷マシンは減少の一途を辿ったから、スーパーモンエヴォは もはや

成り立たない おまけクラスと化したのかも知れない。

 

今後、単独開催などは 起こり得ないだろうし・・・

また 一つ下のモンスターエヴォクラスとの混走とて、実現は厳しい。

 

空冷最速スーパーモンスターエヴォリューションクラスは これからも

水冷最速ハーキュリーズクラスとの 混走で続くのだ。

 

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その事実を、受け入れなければならなかった・・・

 

本来なら同じ空冷マシン同士で 競うべきなのだろうが・・・

スーパーモンスターエヴォクラスにおける 真の対戦者は、今や全て

水冷マシン群なのだと・・・

 

そういうレースである事を 受け入れざる得ないのだ。

 

なれば・・・

 

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目標は ただ一つ・・・

 

空冷マシンであるにも関わらず、水冷マシン達と対等に戦う事。

 

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空冷エンジンで、水冷エンジン車に 真っ向勝負を挑む事である。

 

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それにしても、まさか空冷エンジンで水冷エンジンに対抗するとは

 

もはやマンガとしか、言いようがない。

 

 

だが こんな事・・・        軽々しく口にしている訳ではない・・・

 

ハーキュリーズクラスのマシンと そのライダー達は、圧倒的であり

敬意と尊敬の念をやまないし、その存在は脅威などと言うものでなく

もはや恐怖 なのだから・・・

 

 

それでも あのクラスで走る限り、この目標からは避けて通れないの

だから、どんなに不利であろうと そこを目指すしかないのだ。

 

 

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かつて経験した事がない、想像もつかない程の 高い壁を越えるべく

 

Zレーサー3号機は今、ようやく完成に向かいつつある。

 

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