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SANCTUARY公式ブログ "Engineering&Passion"

ゼッケン39 最後の挑戦 (その11)

6月末に行われた、Zレーサー3号機のシェイクダウン・・・

 

 

前々から決まっていた事だが タイミング悪くイタリア・ドイツへの

出張が重なってシェイクダウンには立ち会えなかったものの 状況の

報告は入って来ており、ミラノにて 居ても立ってもいられない心境

だったのを憶えている・・・

 

 

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バージョン1として完成を果たした、Zレーサー3号機・・・

 

辿り着いた先に待っていたのは、わずか数周で 走行中断と言う

無念の結果であった・・・

 

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全てがオリジナルジオメトリで 存在しないディメンションだから

むしろシャシーのセットアップに時間が必要だと言うのに、この日

シリンダーヘッドからの圧縮漏れで まともに走行が出来なかったの

だから、何とも情けない結末・・・

 

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プラグにくっついたまま、抜けてしまったアルミのスリーブ。

 

原因は、中2気筒のプラグ穴に施されていたヘリサート不良を

直すべく、オーバーサイズで製作し 挿入したアルミスリーブが

溶けて 周囲から圧縮が漏れた事だった。

 

始めから じわじわ抜けつつあった圧縮が シャシーダイナモ上で

症状が少しずつ進行し、コースインと同時に一気に悪化・・・

 

もはや成す術なしの状況に 終わる。

 

 

 

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7月に入り、問題であるシリンダーヘッド修復に取り組んだ。

 

プラグ穴に挿入したオーバーサイズのアルミスリーブを、上下から

溶接して 気密性を保とうと試みるが・・・

 

  

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前回の走行で スリーブの周囲にカーボンが不着していたのか

溶接部が黒ずんで沸いてしまい、思う様に上手く溶かせず・・・

 

溶接は美しい程 しっかり溶け込んでいる特性がある為、どうにも

きれいに溶け込んでいない状態に一抹の不安を感じたが、それでも

5割近くは繋がったと判断できた為、このままネジ切り加工へと

踏み切る。

 

この後 新しいシートリングを圧入して、バルブを擦り合わせし直し

燃焼室形状を復元させれば完成だ。

 

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燃焼室を元々の多球形状へと戻すべく、隣の燃焼室形状を見ながら

刃物とフラップホイールを用いて 丹念にそっくりな形へと削った。

 

見た目は似ていても 実際の容積にバラツキは出ているだろうから

それを揃えるべく、全ての気筒容積を測定しようとしたが・・・

 

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中2気筒の燃焼室測定に 差し掛かったところ、なぜか測定液が

なかなか溜まらない・・・

 

注入シリンダーに詰まり物でもしたかな・・・ と思ったが、直後

 

一瞬 まさか! と 青ざめる。

 

おもむろにヘッドを上げて見ると・・・

 

 

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やっぱり!

 

原因は修正したプラグホールからの 液漏れ・・・

それもポチョポチョと早い速度で落ちる、尋常ではない漏れ方だ。

 

 

巣穴かっ?

 

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目に見えないとは言え、いずれにせよ 只そのまま満たしただけの

一気圧で ここまでダラダラ漏れでは、圧縮など掛けようものなら

ひとたまりも無いだろう・・・

 

 

ダメだ・・・                    全然  直ってない・・・

 

全く予想していなかった事態に 気持ちが揺れまくる。

 

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今までこういった類の修理を 沢山こなして来たじゃないか・・・

いつだって 何だかんだ言っても、上手く直せて来れたのに。

 

溶接で盛って目で見て削り、さも 最初からそうであったとばかり

人より器用に加工が得意だし、重要となる絵心だって自信があって

自分の目と手と 感性を、誰よりも信じて来た・・・

 

金属を相手に まるで彫刻をしているかの如く上手く修正を施して

自らが己惚れる程の出来ばえで こなして来たのだが

 

今回はなぜか・・・                  直せない・・・

 

 

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思い切って患部をすり鉢状に大きくえぐり、奥深くまでトーチを

入れて溶かし込んでやれば 直るかも知れない・・・  と、そんな

思いが一瞬 頭をよぎったが。

 

そこまでやれば 熱の影響で、ガイドもシートリングもやり直しに

なるのは確実。

 

今は このヘッドに執着してはいけない・・・

まずは健全な状態で走らせる事が大事であって、修理は二の次だ。

 

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不本意だが、もう一つ用意していたスペアのシリンダーヘッドを

フルノーマルだが 使うしかない・・・

 

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バルブもポートも 完全にスタンダードなノーマルヘッドだが

今から加工していては 来週の走行には絶対間に合わないから

そのまま素組みして とにかく走らせる!

 

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完成したばかりのレーサーと言うのは、とにかく ゼロスタート。

 

ましてや3号機は、A16のオリジナルフレームシャシーであり

前後サス・車高・最終減速比・ブレーキフィールやポジションまで

とにかく ありとあらゆる車体セットアップ課題が山積している。

 

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6月のシェイクダウンが とてもそれ所ではない終わり方だった

だけに、今度の走行を落とす訳には 絶対行かなかった・・・

 

贅沢は言えない。

 

エンジンパワーは先延ばしにして、まずは全開走行が出来る事。

もはや優先順位はそこにある。

 

 

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カムも今までと同じ ロースペックなものを使用しているが

とにかく4気筒、気持ちよく燃焼してくれれば いい・・・

 

そしてその間、11月の本番までにヘッドの修理を成功させるか

あるいは 新しいシリンダーヘッドを造り上げるか・・・

いずれにしても 今は車体のセットをスタートさせる事である。

 

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急遽、フルノーマルのシリンダーヘッドで完成させたエンジン。

ZX10Rのフューエルインジェクション スロットルボディは

当然の事ながら 取り付けできない・・・

 

A16に使用している Z1000の純正スロットルボディを

アダプターを介して取り付ける仕様だ。

 

 

そして2日後・・・

 

 

 

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エンジンが搭載され、無事 火が入る・・・

 

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ツインプラグではない シングルプラグで、バルブやポートの径も

フルノーマルのヘッドだから、もう一度マップ調整が必要であり

次の走行日まで もうあまり日がない。

 

 

前途は多難・・・

が しかし、これで初めて3号機は 全開走行ができる事だろう。

 

 

今までのレースだって 最初から上手く運んだ事なんて無かった。

 

いつだって 一歩ずつ・・・

失敗して 挫折して、その繰り返しの中 一歩ずつ歩んで来たんだ。

 

 

今度の走行には これで臨む・・・

 

まずは一歩、踏み出さねば。

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