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SANCTUARY公式ブログ "Engineering&Passion"

ゼッケン39 最後の挑戦 (その18)

短期間集中にてセットアップが行われている、Zレーサー3号機。

 

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少し前に比べ、空冷エンジンには優しい気温になりつつあった

10月30日の筑波サーキット。

 

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ファイナルは良い形になったが、マップは毎回 微調整が必要で

朝の時間帯は 必ずこの場面からスタートをする・・・

 

前々回から本格的にトライし始めた前後サスのセットは 今だに

迷宮にあり、油面&バネレートをシュミレーションしては変更を

繰り返すの連続で 先が見えない状態にあった。

 

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これだけ短期間集中で仕上げているのは、裏を返せば 順調では

ないと言う事でもあり、ライダー國川浩道の描くイメージの中では

セットアップが相当遅れていると言う判断でもあるのだろう・・・

 

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胸中 いくばくか。

 

何せ前回 2個目のシリンダーヘッドクラック補修部からオイルを

吹いてしまうと言う最悪の終わり方だっただけに、今日この日の

走行で ある程度の手応えを掴みたかったのだ。

 

 

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そのシリンダーヘッドのクラックだが、この日の走行を迎えるに

あたり、表と裏からきっちり溶接で補修を施している・・・

 

タペットホール上までクラックが到達していただけに、溶接での

高熱を加える事はさけて来たのだが、オイルを吹いてしまっては

元も子もないのだから 決断せざるを得なかった。

 

 

 

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とにかく車体セットの課題が最も遅れており、今日はそこを中心に

ピットインが繰り返されて行くはず・・・

 

ここの詰めを決勝までに間に合わす事が出来なかったら 目指す

領域に到達するのは難しい事だけに、乗り手もメカも それこそ

真剣そのものであった。

 

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数周の後、最初のピットイン。

 

ますはシリンダーヘッドからのオイル漏れが 気になる所だが・・・

 

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どうやらオイル漏れはない・・・

 

ここまでの練習走行で やっと全開にする事が出来る状況になった。

 

國川浩道には 随分と遠回りをさせてしまった様に思う・・・

 

 

 

 

 

少し前の事・・・

 

実は3個目のシリンダーヘッドを 入手していた。

 

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プラグのネジ穴も良好・・・

クラックもない 健全なシリンダーヘッドをベースに、最低限の

精密内燃機加工だけ施した 状態の良いノーマルのヘッドである。

 

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過密なスケージュールの中 ダイヤモンドエンジニアリングの

尽力にて、ノーマルバルブではあったが バルブシートリングの

カットと デッキ面研だけ施したもの・・・

 

どうしてもこれだけは!と 無理言って間に合わせて貰ったのが

唯一、絶対に欠かす事が出来なかった ツインプラグホール加工。

 

このツインプラグ化だけは 外す事の出来ない、何よりも大切な

要素だった為、間に合って良かったと 心から思う・・・

 

 

 

 

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この日の走行終了後に、シリンダーヘッドは3個目に交換される

予定であり、今日一杯使い切って 車体を一気に進める思惑である。

 

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レースが近くなった事もあり、走行するRクラスのマシン達も

混走の水冷ハーキュリーズマシンの姿が多くなっていた・・・

 

良い機会なので、空冷Zのエンジンがどの程度 ストレート競争

出来るものなのかを見極める為、CXコーナーから2ヘアピン

バックストレートを望めるポイントに移動し、その走りを見る。

 

 

どのマシンも全開だったのかは不明だが、一部190馬力クラスの

マシンを除いて引き離され方は少ない・・・

 

國川のシフトアップが巧みな事もあるのだろうが、 あぁ せめて

150馬力までエンジンパワーを上げてやる事が出来ればと・・・

 

胸に痛みを憶える 思いであった。 

 

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だが そんな思いを裏腹に、國川は今まで見せた事がないピッチの

上げ方を始める。

 

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それはピットで待つ者達にも はっきりとわかる速度変化であり

0秒フラット付近から・・・

 

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一気に59秒台へ突入させて来た。

 

ようやく “らしい走り” をさせてやる事が 出来たと思ったのだが

ここで走行が終了・・・

 

これまでの中では一番良かった様に思えるが、決勝まで残すところ

あと10日と言う状況であるし、メカニック達の疲労感はピークに

達しつつあったから 手放しで喜べるものではなかった。

 

 

 

 

そして翌日・・・

 

 

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10月2日の走行用に組んだエンジンをリメイクし、143.18馬力

仕様で24日から25日にかけ、連続で2日間走行。

更に昨日も走行したエンジンだから 今回の分解では腰下まで全て

しっかり見ておかねばならない・・・

 

爆弾を抱えたまま よくぞここまで持ったと、思った矢先。

 

 

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2日の走行から採用した Web製 435カムシャフトに、大きな

損傷が見つかる・・・

 

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エキゾースト右側の軸部 ジャーナルに、かなり深い傷跡・・・

カムジャーナルの摺動部かじりは 今までも幾つか見た事があるが

これほど深くかじりついているのを実際に見たのは初めてである。

 

このカムは もうダメだ・・・

早速 輸入元に訪ねるも、国内在庫なしの回答。

 

どうしたものかと悩んでいた時、スピードショップイトウの代表

アキオが「中古なら持っている」との事で 快く分けてくれる事に。

また同時に ジャーナルのかじりは「カムラインが原因では?」と

ZAPレーシングの代表 長谷川氏が 語っていたとも。

 

なるほど、 確かにかじりついた場所は クラックを溶接補修した

位置のカムホルダーであったから 歪でカムラインが狂った可能性は

大いにあり得る・・・ と、直結する因果関係に そうだと感じた。

 

大切なカムシャフトを一本 ダメにしてしまったが、またも友人に

助けられて エンジン作業を再開。

 

 

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ピストンとシリンダーライナーは共に、もうダメである・・・

 

ここは距離を重ね タイムが上がる如に予備を準備しておかねばと

スタンバイさせておいた新品があり、いよいよそれに交換をする

タイミングと判断。

 

この後 腰下まで全て分解し、現段階ではクランクシャフトに大きな

ダメージはなし・・・    ミッションも 一部消耗品のみ交換でOK。

クラッチハウジングに若干の劣化が見られた為 交換して対処した。

 

 

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今日中に完成させないと、この後 誠太郎が作業をすべく控えている

マップの調整や シフターの接続をする時間がなくなってしまう。

 

それでも今回がエンジンを大きく開ける最後の機会であるだろうから

0.1mm単位での圧縮比設定を 時間をかけて慎重に運びたい・・・

 

殊に、多球燃焼室とピストンヘッドとの 35°テーパー部に関しては

1mm前後のクリアランスまで攻めたいし、エキゾーストバルブの

バウンス対策は バルブスプリングの荷重変更で解決できていたものの

インテーク側のPVは以前ギリギリであるから、ガスケットハイトの

選択には 時間を掛けたかったのだ。

 

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測定誤差がなかったか、何度も測定して 計算の繰り返し・・・

 

ベースガスケットからブロック、シリンダーヘッドガスケットまで

トータルハイト 90.6mmで決定。

 

より高出力させたい想いと、壊れてしまう事への恐れ・・・

二つの気持ちが葛藤した挙句での数値であった。

 

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一方で 誠太郎の方はと言うと

 

少し前から構想し、造り始めていたものがあった・・・

 

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ZX‐10R純正スロットルボディを、ボルトオンで固定する為の

アダプタープレートである。

 

測定をして削り出し、インテークポート内径との合わせ削りまで

わずか2日間で ここまで造り上げていた。

 

取り付け角度こそ 空冷Zのノーマルそのものではあるが、最初の

シリンダーヘッドで試みた 下吹きインジェクター式 大径φ43の

スロットルボディを取り付けできるアダプターであった。

 

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更に誠太郎は「ヘッドを組むまで まだ時間ありますか!」 と叫ぶ。

 

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バルブスプリングの荷重値バラつきを ここでようやく測定・・・

全てのバルブスプリングが同じ荷重で働く様、始めて調整を行った。

 

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ハイパワー化された水冷エンジンマシンや 90年代に生産された

新しい空冷エンジン車両に、空冷Zのエンジンでストレート勝負を

するのは 実は無謀行為とも言える事で、そこを少しでも補うべく

ギリギリでのエンジンチューンを施すのだが、空冷エンジンの場合

故障リスクなしでのパワーアップ化は 実際には中々難しい・・・

 

だが、スロットルボディの大径化やバルスプリング荷重の同調は

エンジンの故障に繋がり易い ハイコンプ化や点火時期の進角等と

異なった形で出力アップに貢献するから、有効な手法と言える。

 

 

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レースウィーク 突入前夜・・・

 

閉店後、回り続けるシャシーダイナモの音が止まぬ夜であった。

 

 

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最高出力 146.70馬力 Maxトルク 12.18 まで、若干ではあるが

上乗せする事に成功。

 

これでもまだパワー不足と言う 水冷最速クラスとの混走レースだが

このエンジンで来たるべき11月10日の決勝に臨もう。

 

直前で決定的ブローを起こそうものなら道は途切れるが、それでも

空冷Zエンジンで挑戦する以上、避けては通れない 馬力のリスク。

 

覚悟を決めて 臨むしかなかった。

 

 

 

 

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