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Rumbling - NOBLESTスタッフのコラム

Vol.10 TASTE OF FREE-LANCE 2006 SPECIAL ROUND 後編(1)

2006年10月2日

8月の終わり。多忙な日々の通常業務の合い間を縫って、TASTE OF FREE-LANCE MONSTER-EVOLUTIONクラスに参戦するSANCTUARY-Zレーサーのエンジン改良へのチャレンジを進める。

■加速性能を改善するために

2バルブエンジンをよりハイレベルにチューンナップを施そうとすると「吸排気工程における燃焼ガスの充鎮効率向上」という4バルブエンジンにみられる特性を、2バルブにおいてどこまで追求できるか、このテーマに立ち向かわざるを得ない。2バルブは所詮2バルブ、4バルブの特性を再現することはできない...。そうなると、異なった要素を用いて出力を上乗せするしかない。

適正な圧縮比を探り、燃焼室形状との相性を検討する。バルブの寸法、材質、そしてバルブスプリングのバネレートと特性。吸排気ポート拡大後の流速が充鎮効率にどう影響を及ぼすか。複数のテスト用シリンダーヘッドを用意し、カムシャフトのプロファイルとオーバーラップの設定を様々に試み、連日シャシーダイナモ計測を行い、トルクカーブの傾向を探る。目的は、やみくもに最高出力を伸ばす事ではなく、コース上において直線区間を力強く加速し、短時間で車速を上げるための実践的なトルクを得ることだ。メカニック達は、リーダーの笹賀を中心に、日中の通常業務終了後、連日深夜に及ぶ作業でエンジンモディファイを進めて行った。



2バルブの性能をどこまで高められるか
 
作業は連日深夜に及んだ

■まずまずの結果を得たテストラン

地道な作業の繰り返しによって、確実にトルクアップを果たしたであろう今回のエンジン。早速、実走でのフィーリングをチェックするため、ライダー上田さんと共に筑波サーキットへ赴く。

気温33℃、路面温度は50℃に届こうかという厳しい暑さの中、シェイクダウン、テストライディングを開始。さすがに厳しいコンディション、まずは油温の急激な上昇。テンプメーターの液晶表示は130℃を突破。決勝は9月18日、開催当日は現在より気温も油音も下がっているだろうと予想はしているものの、PITに戻ってきたマシンのエンジンは明らかに熱だれ気味だ。肝心の加速力アップに関しては、なかなかの手ごたえ。ライダーの上田さんも「悪くないね。」と、まずまずの結果でテスト走行を無事終了。この日の走行目的はタイムアタックではなく、あくまでエンジンモディファイ後のフィーリングチェックだから、エンジンがタレようが壊れようが、さらに一歩踏み出すためのデータ収集が出来れば、それで良しとする。


■「ぶっ壊れてます。」

筑波より戻ってきた笹賀達は、早速エンジンの全分解にとりかかる。事務作業で机に向かっていたボクの所へ、笹賀がトコトコやって来て一言「エンジンぶっ壊れてます。」「え〜っ!?」未だテスト段階であり、エンジンのダメージ発生はある程度覚悟していたとは言え、やはり驚きを隠せない。急いで階下の工場に降りて行き、クランクケースまで全分解されたエンジン各部を見る。思わず「お、面白い!」という感想が口をつく。「ストリートじゃこうはならないよな〜。」ストリートでは到底起こりえない桁外れな壊れ方。改めて、レースに使用されるチューニングマシンの過酷な条件を認識すると同時に、この条件を乗り切るエンジンを開発するということの凄さを感じる。



ストリートとは異次元の過酷な条件をクリアする
 
ボルト1本1本にメカニック達の想いがこもる

■激しい走りに耐えうる仕事を!

カスタム屋さんがよく使うセリフの一つに「ここまでカリカリにチューンして飛ばしたら、そりゃあトラブルもあるよ」というのがある。ある面において、それは正しい部分もあるのだが、このセリフ、ストリートという使用状況ならトラブルは仕方が無いという誤ったニュアンスを含んでいるように思う。ツーリングの途中等で調子が悪くなってしまったりする事が、果たして「ストリートだから」許されるのだろうか?ストリートであってもマシンがトラブったらダメに決まっている。先のセリフをレースという特殊な場面に置き換えてみると、言葉はさらに深刻な意味を持つ。レース(T.O.F モンスターEVO)では、たった12LAPという限られた時間の中で、仮にトラブルが発生すると、「即レース終了、成果なし」と言う極端な結果に結びついてしまう。1LAP=1分0秒台を目前にしたハイレベルで過酷な走りの上で、さらに「ここまでカリカリにチューンしてもトラブルは起こらない!」とするタフな性能を求められるサーキットという場は、なんと厳しいところなのだろう!

そんな想いを胸に、まずは分解したエンジン各部の詳細なチェックを行い、いかなる状態で、どの様にダメージへと発展していったのか?を分析し、更なるモディファイメニューへと展開させて行く。サイレンサーは、10月にリリースすることになった、NITRO RACINGコニカルチタンVERSION-2(通称V-2)を装着。かくして進化を遂げたZレーサーは、再び実走テストを行うべく、筑波サーキットへと向かう。



NITRO RACINGコニカルチタンV-2を装着
 
再び筑波テストへ


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