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Rumbling - NOBLESTスタッフのコラム

Vol.14 カスタムを取り巻くそれぞれの時代(その2)

2007年2月6日

行楽地を目指すファミリーカーの列を縫うようして続々と到着するバイク達。250cc〜1,000ccまで、国産・外車、大小取り混ぜ、多い時には数百台規模のオートバイが群れを成す...。1980年代、天気の良い休日のパーキングエリアにはよく見られる光景でした。

もちろん私自身もバイク乗りとして、その数百台の群れに愛車を連ねていた一人。縁石に腰掛けタバコの煙をくゆらす者、缶コーヒーを片手に仲間と談笑する者。これ見よがしに着込んだ革ツナギ、カラフルなライダースブルゾンを纏ったライダー達が次々と目の前を行き交い、「日本人は全てバイク乗りになってしまったのか?」と思わせるほどにバイク人口が多かったのです。


まさにオートバイ百花繚乱の時代
 
各地であたりまえの光景だった


■遠い過去となった第二次バイクブーム

日本自動車工業会の統計によると、国内における自動二輪車の販売台数は、1982年の334万台をピークに減少を続けています。昨今では、二輪車専用に白線で区切られた屋根付きの駐車スペースが設けられるなど、パーキングエリアにおけるライダーのための設備は以前に比べて充実してきているにも関わらず、皮肉な事に、そこに並べられるはずのバイクの数は減り続け、以前のような光景を見る事はほとんど無くなってしまいました。

昭和から平成の時代へと移り変わった、この二十数年の間に起こった変化です。
 
ライダー達が戻る日は来るのか



■二輪販売業界の厳しい現状

1980年代の実に四分の一にまで縮小したとされる二輪車販売の市場規模。長期的な低落傾向は、現在もとどまることなく悪化の一途を辿っています。

経済産業省が2002年に調査を行った「商業統計表」によれば、二輪車小売店の総数は全国で1万2458店舗。その内、法人が3,442店、個人店が9,016店と圧倒的な比率で個人店が占めています。また、働いている従業者規模に関しては、法人、個人を問わず10人未満という店舗がほとんどであり、この事からもバイクショップの多くが、店主と少数のスタッフで成り立っている極小規模事業として営みを続けている業界である事が見てとれます。

また、経営状況を計るデータとして、中小企業リサーチセンター「小企業の経営指標」によると、二輪小売業(原付を含む)の収益性、生産性、および安全性の指標は以下の通りとなっています。

※二輪自動車販売業(原動機付自転車を含む)の経営指標

  項目 平均 黒字かつ
自己資本プラス企業
収益性 総資本対経常利益率 (%) -1.3 2.8
自己資本経常利益率 (%) 57.7 23.0
売上高総利益率 (%) 30.3 31.5
売上高営業利益率 (%) -1.0 1.5
総資本回転率 (回) 2.2 2.3
生産性 従業者一人当たり売上高 (千円) 26002.0 29536.0
従業者一人当たり有形固定資産 (千円) 4300.0 5685.0
従業者一人当たり人件費 (千円) 3863.0 3828.0
店舗面積3.3平方メートル当たり売上高 (千円) 4032.0 4164.0
安全性 当座比率 (%) 50.6 56.7
流動比率 (%) 200.0 240.4
固定長期適合率 (%) 93.9 91.2
自己資本比率 (%) -11.7 13.4
その他 損益分岐点比率 (%) 107.5 101.3
1企業当たり店舗面積(平方メートル) 211.6 252.3

この指標から見てとれる事は、

1. 平均すると、流動比率が200%となるものの、当座比率が100%を下回っており、資金繰りは厳しい。
2. 平均、黒字かつ自己資金プラス企業の双方ともに損益分岐点比率は100%を超えており、収益性は極めて低い。
3. 黒字かつ自己資金プラス企業の方が1店舗面積は相対的に大きい。

平均的な二輪車小売販売業者は既に債務超過の状態にあることが解ります。
とにかく「バイク屋」という業種は極めて厳しい経営状態が殆どであるということです。


低迷する二輪車販売市場
 
ほとんどのショップが厳しい状況にある


■カスタムショップの現状

当社でも年間を通して車輌の小売を行っているものの、得意分野として取り組んでいるカスタム・チューニング部門は、おかげさまで忙しい日々を送っているため、一見すると、二輪車販売市場の低迷による影響は少ないように見えるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。二輪車の需要減少によるカスタム・チューニング業界への影響は少し遅れてじわじわと押し寄せてくることは必至であり、業界ではすでにその兆候が見られています。

代表という職務柄、同業の社長さん達と話を交える機会もあります。そこで、最近あった話を実例としてご紹介します。

その社長さんは二輪車の小売と同時に、カスタム・チューニングと独特の技術を全面に打ち出した特殊な機械加工を生業として、長期にわたり安定した経営を続けて来られました。店舗、工場とも立派な自社ビルで、各種工作機械の設備も充実したものでした。常時4〜5人の従業員で業務に追われる忙しい日々を送っていました。ところが車輌販売も含め全ての業績が落ち込み気味との理由から、自社ビルを手離し、人員も削減した形で地方の小型工場に拠点を移し、細々とした形で加工業だけを続けて行くと言うのです。長い目で将来的展望を考えた時、その社長さんは「撤退するなら今。」と判断し、行動を起こしたのです。

私はその話を聞いた時、「社長は現役年齢で一流の技術者でもあるのだからもったいない。借金に追われている訳でもないのに...。」と、同じ業種を営む仲間として寂しさを感じると共に、不安な気分に襲われました。



カスタム・チューニング業界とて例外ではない
 
優れた技術者が撤退を余儀なくされている


■夢と不安と

いま全国で、年金未納高齢者の生活破綻が急増していると聞きます。働き盛りであった20〜30代の頃、年金未納期間があり、高齢者の立場となったにもかかわらず年金が受給されず、貧困と戦いながら生き続けているといいます。皆、口々に「自分が年をとって、まさかこうなるとは思わなかった。」と呟かれるそうです。

私も含め、小売店〜カスタムショップまで、いわゆる「バイク屋さん」の大半は、なかなか先々を見通そうとしていない方が多いのではと感じます。店を開業し、大なり小なり一国一城の主として夢に向かって突き進む一方、自分の身に何かが起こったり、あるいは時代の流れにのまれ、経営状況が悪化した時、果たしてクリアして行けるのか、という大きな不安も同時に抱えています。これから訪れる将来に対して、一定の計画性を持って行動し、時々において適切な判断をしなければならないことは誰しも共通ですが、理想的な撤退の仕方までを考えられる人はそう多くないでしょう。

私自身は現在営んでいる、カスタム・チューニングの業界を決して見捨てようとは考えていません。現役でいられる残りの歳月があとどれくらいかはわかりませんが、私自身が高齢者と呼ばれる立場となった時、苦渋の撤退ではなく、やり遂げた達成感に満たされる様、日々知恵を振り絞って、前進し続けなければと考えています。



創業時の夢は今も変わらない
 
今後も当社を見守ってください


NOBLEST代表 中村博行