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Rumbling - NOBLESTスタッフのコラム

Vol.16 サンクチュアリー・メカニックブランド

2007年4月9日

蛍光灯から発せられる薄暗い明かりの下...、冬の底冷えする寒さ、むせ返るような夏場の猛暑に、設置されている空調機も限界を超えてしまう。空気中には切削作業から発生する微小な鉄粉が舞い続け、ガソリンとオイルの臭いが漂う。そんな過酷な環境とも取れる工場。その片隅から様々なオリジナルパーツが生み出されます。今回はそんな工場発のお話をしましょう。


▼チューニングという業務の性質

工場においてのカスタムや修理といった業務。これを継続して行う事は生易しいものではなく、肉体的疲労の蓄積はもちろん、精神的にも非常に辛く感じる瞬間があります。

つまずく事無く完了できる内容の作業であれば、気持ちの負担もさほど無いのですが、私達の仕事は残念な事にほとんどの作業が簡単に終えられる物ではありません。単純に壊れたパーツ類を順番に交換して行くといった性質の作業は少なく、その都度測定したり確認をしてみたり、反復性を伴う作業が多いのです。ちょっとしたポイントに単品製作を施す、いわゆる「ワンオフ」の必要性があったり、一つしか作らないのに複雑な図面を作成しなければならなかったりと、やたらに時間ばかり掛かってしまうケースが多いのです。

「カスタムショップなんだから仕方ないでしょう!」と言われてしまうかも知れませんが、実際に経験してみると、その難儀な道のりにきっと驚かれる事かと思います。


過酷な環境にもめげないメカ達の情熱には頭が下がる
 
全てのノウハウは日常的な業務の中から


▼たとえ部品に原因があろうとも...

カスタムパーツと呼ばれる多くのアイテムは一般的に「ボルトオン」で取り付けが可能で、装着後も快調でノントラブルという解釈がなされていますが、中にはまるっきり取り付けが出来なかったり、短命な寿命の製品があったりします。そんな時、製造販売元に問い合わせをしてみると、「あ〜...その部品は最初からそういう物なんですよ!」なんて解答を出された経験がある方も少なくないのではないでしょうか?

私達カスタムショップでは、お客さんのマシンを手掛ける時、そういった大なり小なりの問題を抱えるパーツを幾つも使って作業を完成させなければならないのです。そして一度問題が起きた時、そのパーツに根本的欠陥があろうがなかろうが、その責任は作業を施した現場のメカニックに向けられてしまいます。

例えば、高価な点火系システムをお客様からのご依頼で取り付けを行い、納車したとします。工場で調整し点検した時点では問題が無かった物が、納車後に突如不調を起こしてしまう...。調べた結果、明らかに取付後間もないパーツその物に故障が発生しているのです。ですが、お客さんはなかなか納得してくれません。「エンジンがダメなんじゃ?」あるいは「キャブ?」と、いろいろ疑われてしまいます。お客さんの立場になれば最もだと私も思うのですが...。辛い事です。

この様にパーツ単体での不始末は製造販売元ではなく、直接取り付けを行ったメカニックが責任を取らざるを得ない。残念な事にこの傾向にあるのが事実なのです。


ボルトオンでOKという訳にはいかないのが実状
 
装着後の責任はメカニックが負わなければならない


▼より良いパーツを掴むために

パーツ自体に問題があり、その責任を追いかぶらないためにも、私達メカニックは、より間違いの無い高い完成度を目指して行きます。

「ボルトオンでOK!」と謳われているパーツであろうと、いちいち手間暇かけて測定をします。使用する事になった製品をまず疑ってみる、という所から始まると言っても過言ではありません。パーツを検査した後、問題の無いものに関してはそのまま使用しますが、寸法や位置が間違っていたパーツにおいては当然何らかの加工を施し、修正を終えた上で組みつけて行きます。こういった一連の流れの中でマシンの完成度は上がって行きますが、それでも直しきれない様なパーツに出くわしてしまった時、それその物を自分達で造り出してしまう展開に至ります。

現在、市場で入手できるパーツ群の中に存在していないもの、あるいは存在はしているが、ちょっとこのパーツは使いたくないと判断できる製品。そういったパーツに替わる物を自ら作り出して行く。より適材適所で優秀な製品を生む。または「こんな物があったらいいのに...。」と思える便利な製品。そんな想いがサンクチュアリー・メカニックブランドになったのです。



使用するパーツは必ず検査・測定を行う
 
問題あるパーツは修正の上で装着する


▼優れたパーツは机の上ではなく工場から生まれる

私は社長と言う立場柄、工場で黙々と作業をし続ける複数のメカニック達をよく見ています。つかれた表情をしているメカもいれば、作業の峠を超えてホッと一息、安心感を出しているメカもいます。

オイルにまみれ、加工金属粉をかぶりながらも一途に作業を続けるメカニック達。通りすがりにふと目を止めると一人のメカが何気に興味深いパーツを造っている。これはと思いよく見ると「ほ〜、このパーツはかなり便利だなぁ...。」とか「オイ!これは純正品に替わる優秀なパーツだな!」といったセリフを思わず口ずさんでいたりします。サンクチュアリー・メカニックブランド誕生の瞬間です。

このパーツを今日これ一つで終わらせてしまうには惜しい!今後も工場の中で大きく活躍してくれるに違いない!そう心に強く思わせる物があるのです。ましてや量産化する事で毎回図面を作成する必要が無くなりますし、お客さんの予算面にも良い影響が出てくるわけです。

そんな合理的な考えから生まれたきたサンクチュアリー・メカニックブランドは今日、全国から沢山の業者さんやプライベーターの方々に喜んで使っていただける様になりました。これからも愛されるパーツでいられるよう、日々努力と研究をし続けなければならないと思います。


製作した全てのパーツはいつでも量産化が可能
 
代表的パーツであるマスターリザーバタンクステー


▼バイクとチューニングを愛するからこそ

NITRO RACING。SCULPTUREシャシーパーツ。ノーブレストは少ないながらも幾つかのブランドパーツ販売を手掛けておりますが、サンクチュアリー・メカニックブランドには他に無い独特な物をいつも感じさせられます。その背景にある物は、現場で戦っている者達の苦しく厳しい環境の中から生まれてくる知恵と熱い情熱なのかもしれません。

大切な愛機だからこそ...最高の技術とセンスを。

チューニング、カスタムという文化の水準を底上げして行くためにも、より良い製品を生み出して行きたいと常々思う次第です。



 


AC SANCTUARY メカニック一同
代表取締役 中村 博行