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Rumbling - NOBLESTスタッフのコラム

Vol. 20 TASTE of TSUKUBA 参戦後記
2007年11月2日

■単なる通過点となってしまった0秒台

オリジナルフレームを1から造る...。それも筑波サーキットを一周1分を切るラップタイムで走り抜くことが可能なポテンシャルを持たせる事。しかも空冷Zのエンジンで...。

こんな無謀とも思えるチャレンジを行わざるを得なくなったのは、昨年起きた「1号機」の大破がきっかけだ。しかし、このチャレンジには、もう一つ大きな動機があった。私たちチーム全員の脳裏に常に浮かぶ漆黒のマシン「RUSH DEAL-Z」と浜口俊之選手の存在である。昨年秋の段階で「1号機」は0秒台目前のタイムを順調に記録するようになっていた。いよいよ次は59秒台と鼻息を荒くしていたのとほぼ同時期、あの「DEAL-Z」は非公式ながら既に驚異の59秒台を叩き出していた。この時から0秒台は「目標」から「単なる通過点」となってしまったのだ。



大破した1号機。全てはここから始まった。
 
「DEAL-Z」の活躍は我々にとって励みでもある

こうしてスタートした「2号機」計画だったが、その開発は険しい道のりの連続だった。オリジナルフレームは形になるまでに非常に多くの工程を要する。製作開始当初の作業は治具製作につぐ治具製作...。正確無比なフレームを作り上げる為には、決して避けて通ることのできない重要な準備工程なのだが、いつまで経っても形が見えてこないことがもどかしく、「治具ばかり造っていて、ちっともフレームに辿り着かないじゃないか」と、思わず口走るほどだった。

計画後半には通常の工場業務に支障をきたすほどになり、日本全国から多数の注文をいただいているオリジナルコンプリートマシン「R.C.M」の製作や、修理、加工作業といった一般業務に至るまで、多くの方々に納期の遅れで迷惑を掛けることとなってしまった。この場をお借りしてお客様にお詫び申し上げます。

さて、そういうわけで何とか形になった2号機。7月も終わりに近づいた頃だった。



理想的なフレーム作りは一筋縄には行かない
 
様々な治具を駆使してディメンションを固めていく

タンクもアルミ板から切り出した完全オリジナルだ
 
その姿を現し始めた2号機

正確に各パーツを組み付けていく
 
遂に完成。シェイクダウンに向け準備が整った



■限られた熟成期間で...

突如開催が発表されたTASTE of TSUKUBA(テイストオブツクバ)。日時は10月21日。今年も無事にレースが開催されるというニュース自体は吉報であったが、我がチームとしては複雑な心境。時間が無い...。レースまでわずか2ヵ月半という期間で「2号機」を仕上げることができるのだろうか?「どう考えても無理だろう...。とてもベストな状態でレースの日を迎えられるとは思えない。」と、ネガティブな心境だったことは確かだ。

通常、完成したマシンはサーキットでレースに臨むまでに一定の熟成期間が必要だ。実際にライダーがコース上を走らせながら、足回りのセッティングはもちろん、キャブレターのセッティングや各部の仕様など、様々なデータをピットで収集し、アフター作業を繰り返しながら本来のポテンシャルを少しづつ引き出して行く大切な行程で、1〜2年を要することも珍しくない。これらの作業を経て初めてマシンはレーサーとして機能するのだ。

2号機は完全に一から製作したオリジナルフレームのマシン。使用する足回りパーツやシャシーディメンションは1号機と全く仕様が異なるため、熟成期間は出来る限り長く取りたいのだが...。「やれやれ、前途多難なデビュー戦だな...。」と、感じずにはいられなかった。



熟成期間を経ずしてレーサーとは呼べない
 
レースまで2ヶ月半。間に合うのか...



■シェイクダウン

遅い梅雨がようやく明けた8月第一週目の暑い盛り、いよいよ筑波シェイクダウンの日を迎えた。お馴染み上田隆仁のライディングにより2号機がピットロードからコースインしていく。「さぁて、どんなマシンなのヨ?」とばかりに、まずは軽めのペースでLAPを開始するが、3〜4周したところで早々にピットイン。ヘルメットのシールドを勢い良く上げ開口一番、「ハンドルの振動がひどくてとても全開にできたもんじゃない!」という言葉が飛び出した。振動の原因はグリップエンドにあった。ハンドルに取り付けるグリップエンドウェイトは、その自らの重量によって悪質な微振動を効果的に吸収してくれる優れものなのだが、重量物である以上、ステアリングの旋回動作にも少なからず影響を及ぼす。その為影響を最小限に留めるべく、軽量なアルミ製の小さなグリップエンドをチョイスした事が仇となってしまった様だ。何とか現場で別のグリップエンドを用意し、ハンドルバーのパイプの中にも追加のウェイトを詰め込んで再スタート。今度は良さそうである。

2号機に慣れ始めた上田が徐々にアベレージ・スピードを上げていく。見守るレース部門リーダー笹賀の表情にも緊張の色が浮かぶ。1分2秒台後半...、2秒台前半...、1秒台後半と...、みるみるタイムが詰まって行く。そして、1分1秒1!「おいおい、初日だぜ!シェイクダウンでここまで来るか〜!?」と思わず言葉が出る。その後も1秒台前半をコンスタントに記録してこの日のセッションを終了。しかしシェイクダウン走行を終えた上田は、「フロントのアクスル軸が過度に手前に感じられる、フォークのオフセットがショート過ぎるのか?とにかくコーナーリング中に前と後ろでちぐはぐな動きをしていて、果たしてサスのセットだけでうまく行くものなのか!?」と厳しい評価を下した。当たり前かもしれないが、やはり全てが「1号機」とは違っている...。でも上田さん、「その割りにはいきなり1分1秒台って凄くない?」僕は、とにもかくにも初走行の結果にはまずまずの安心感を抱いていた。



期待と不安が入り交じる
 
2号機のポテンシャルを量る時が来た

いきなり1秒台前半をマーク
 
課題を残しつつもまずまずの出だしとなった


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