ここ数年でRCMを複数台所有されるケースは増加傾向で、2台あるいは3台持ちのオーナーは、もはや めずらしい存在ではなくなったと言える。このRCM－538を製作したオーナーも既にRCM－438 Ninjaを 所有されていた方で、丁度シリアル100番違いでの2台目をZ‐1ベースで製作した。先に所有していた 438 Ninjaが先鋭的スポーツバイク志向の前後17インチホイール車であった事から、この538 Z‐1では 異なる資質のRCM2台をと希望され前後ホイールを18インチホイール仕様とした。

となればマシン全体の 雰囲気も当然ノスタルジックな路線でとなるのが常だが、オーナーが目指したのは「部分的に最新パーツも 取り込んで行きたい」と言ったもので、実走行においてより優れた部品、より扱い易さに繋がる部品に関し ては迷わず現代のものを!と明確なコンセプトを基にメニューを選択。絶版旧車の出で立ちでありながら、 走破性・運動性能においてワンランク上の性質を追求した。フレームは硬すぎず柔らかすぎずのオリジナル 補強ステージⅡを採用。

そこに今では廃番となってしまったSCULPTURE製φ38フォーク用ステムKITを 用い、スイングアームも同SCULPTURE製18インチ専用アームの組み合わせで車体を構成している。 ホイールは王道たるフロント2.75&リア4.00のリムサイズをチョイスしたKZ1000MK用だが、ブレーキ キャリパーは今後のアップグレードを考慮しフロント40mmリア84mm取り付けピッチのBrembo製とした。 確かにこれなら、将来CNC製のキャリパーに変更する事も容易であるから効率的な選択である。更に 左右マスターシリンダーにもBrembo製のラジアルポンプ鋳物製のRCSをチョイス。制動時における制御性 ダイレクト感とクラッチリリースの軽さはラジアルポンプならではであり、この仕様もオーナーのコンセプトが 明確に見えると部分である。他にもフラットバルブTMRキャブレターやASウオタニSP‐Ⅱなど、先鋭的な パーツ選択が随所にあり、高い走破性と扱い易さを実現させる要素がはっきりと伺える。

18インチだから、 ヴィンテージバイクだからと言う概念ではなく、長く乗り続けられる事、走り続けられる事への拘りが伝わって 来る仕様だ。如何にノスタルジックなものとは言えここぞと言う時に飛ばせないのなら、大型バイクの魅力も 半減するだろうから、理解できる考え方だと言えるだろう。先に所有していたRCM－438 Ninja、そして今回 新たに増車されたRCM－538 Z‐1。異なる気質の2台のRCMだが、どちらも現役のバイクとして走りを 楽しむための目的で存在している。それは造り手側にとっても、最も冥利に尽きるものである。