もはや風前の灯となりつつある空冷Z系車両達。世界的な枯渇はより悪化の一途を辿り、本当に手に入らなく なるのは目前の事の様に感じられる。Z-1やMK-Ⅱは既に壊滅的状況にあるが、それはZ1-Rとて同じ事で、 むしろ最近ではZ1-Rの枯渇感が最も目立つと言ってもいいほどである。当然のことながら、程度は悪いのに 値段は高いと言う車両が大半を占める様になってしまったが、そんな厳しい条件の元、オーナーは一念発起して このRCMー552の製作を決意。コンセプトは現代的なカフェレーサーZ1‐Rとして造り上げる事である。

現代的と言うだけに前後輪は17インチホイール化を洗濯。セパレートハンドルに低い位置のアッパーカウルと RCM Z1-Rによく見られるルックスである。もちろん見た目に負けないスペックをと、足回りパーツはいつもの 世界選手権アイテムである OHLINS製サスペンション・OZレーシング製ホイール・Brmbo製ブレーキに加え、 日本のSUNSTAR製ディスクローターで構成。老舗メーカーのレーシングブランドはその名に恥じない品質で あり、それはイコール信頼性でもあるからRCMでは採用するパーツメーカーをも大事な要素として見る。それが 優れたマシンの完成度に繋がる要因でもあるからだ。

世界最高峰メーカーのパーツに負ける事ない様、フレーム にはサンクチュアリーオリジナルのSTAGEⅡ補強を施し、SCULPTURE製ステム&スイングアームでそれらを マッチング。エンジンはライフパッケージながらもオーバーホール精度重視の仕上がりで、吸排気系&点火系の アップグレードで実用使用域でのトルク&パワーに不満はない。メーターはZ1‐R最大の泣き所でもあるマスク 回りの軽量化を意識してオリジナル化。ステッピングメーターをカーボンパネルでレイアウトし、視認性と個性化を 図ったものとした。低めのセパレートハンドルに合わせて、シートはナイトロレーシング製RCMコンセプトシートを 用いている。型の老朽化から量産が出来なくなった同シートだが、RCMには単品製作に近い形で供給をしており ライディングポジションの構築に貢献している。

空冷Zは間もなく手の届かない存在になるだろう。Z系の魅力を 知っている者にとっては辛い現象である。このRCMー552のオーナーも、以前よりいつかはZ1‐Rをと考えて おられた方だが、実現不可能になってしまう前にとオーダーに踏み切られた方であった。以前の様にいつでも 手に入ると言う軽い感覚はない。それだけに造り手側としても期待に応えようと全力を出し切る。正にここ数年は こんな状態が続いており終わりが近い事を実感させられるそんな日々である。納車されたオーナーはこのRCM- 552を手に入れ本当に喜んでくれており、見て良し・走って良し・所有して良しに満足して頂いている様である。 造り手にとってこれほど嬉しい事はない。