1970年代から80年代にかけて生産された国産ヴィンテージバイクは、近年空冷Z系車両を筆頭に中古車の 相場価格が軒並み高騰。車両数の減少が招いた現象で日本国内だけに限らず世界中で値段が上昇。加えて 状態良い個体が著しく減少した事で、旧車の市場は大きく変化した時代を迎えた。これはカワサキだけに限らず 80年代のホンダ車両でも起こっており、CB1100F&Rも入手が厳しい状況である。

このRCM-525もそんな 険しい時代の中でオーダー頂いた1台であるが、CB-F&Rシリーズにはベース車価格の高騰意外にもう一つ 難関があった。それはエンジン内部のパーツが殆どメーカー欠品となっている事である。ベース車両の状態は 年々悪くなる一方だからエンジンフルオーバーホールは欠かせないメニュー。ましてやRCMは完成度の高さを コンセプトとしているだけに高い偏差値のオーバーホールを施したい。ところがそのオーバーホールをしっかり 行う為のエンジンパーツがことごとく永久欠品しているから八方塞がりと言うのが実状であった。

重要なエンジン 新品パーツを入手するべくオークションでの出品を気長に待つなど、空冷Z径RCMとは異なる製作プロセスが あって成り立った車両だった。紆余曲折ありながらも造り込まれたRCM-525であるが、17インチホイール化に 伴ってサンクチュアリーオリジナルCB-F系専用リアサスレイダウンを始めとするフレーム側への加工も施工。 ステアリングステムやスイングアームはZ系用のSCULPTURE製品をマッチング良く流用できる為、車体に 関しては順調に進展した。電気系統は幸いにもリプロパーツが多数存在しており、メーターやセルモーターなど 唯一新品に交換できない一部を除けば充実した仕上がりである。

課題多きエンジンは時間をかけて組み上げ、 NOBLESTヴォスナーピストンKITでオーバーサイズ化。吸排気系&点火系パーツのアップグレードにより トルクフルで伸びのあるパワーを実現。対ノーマル比較にて十分体感できる面白い出力フィールへと新生した。 今回この525を製作して改めて感じたのだが、CB-F&RのRCMはもはや風前の灯と言っても過言ではない。 ベース車のコンディション悪化に加えて増々入手が困難となっている新品エンジンパーツ達。それらの要素は RCMを造るのに強い逆風である。もしかしたらこのRCM-525がCB-F&R系RCM最後の車両になるのでは とさえ思わされた。造り手としてはこれがラストシリアルにならない様にと願った、そんな想いの深い1台である。