造りたくても造れない、コストからの問題ではなく、その他の事情から造れないと言うRCMがある。 新品パーツの入手問題、ベース車両の枯渇、この二つの条件が重なると造りたくても造れないと 言う状況に陥る訳である。CB1100Rは正にそんな機種の筆頭であると言えるだろう。過去にも 数台CB1100RのRCMは製作されたが2010年頃を境に一台も製作されていない。旧車ブームが 加熱した事もさながら、以前にも増して純正部品の入手調達が難しくなったからである。このRCM- 630は、偶然買い取りできたCB1100RDをベースにしている。良心的な価格で入手できており、 これがCB1100Rでは最後のRCMになるかも知れないと予感した事から、サンクチュアリーの 好みで造る販売車両RCMクラフトマンシップとして製作する事とした。

オーナー不在のクラフトマン シップなだけに各部の仕様や色はサンクチュアリーの好みをチョイス。ハード面においても前後輪を 17インチワイドホイール仕様とし、あわせてフレーム補強やレイダウンを敢行。アッパーカウルを わずか10mmほど下げるローダウン加工も施している。エンジンは最も重要となる内燃機加工を 全てディンクスが担当。クランクシャフトのダイナミックバランス精度、シリンダーのホーニング精度、 そしてバルブガイド＆バルブシートカットの精度と、全てにおいて精密仕上げを実現させている。 最大の問題であるエンジン内部消耗部品については、数年前よりストックしておいた新品パーツを 多数採用。カムチェーンテンショナー系パーツなど現在入手ができない新品ホンダ純正パーツを 惜しむことなく投入している。これら新品のストックパーツが一台分しか無かった事もCB1100Rでの RCMは今後もう造る事が出来なくなるのでは？と感じさせられた理由であった。製作が進む中で その情報をホームページに告知すると早速ご購入を希望される方が現れ、オーナーが着く事となる。 そこからはオーナーの希望も反映させる仕様で製作が進行。

言うなればセミオーダーメイドの様な 工程で完成に至った。こうして完成を果たしたRCM-630であったが、ストックパーツがあったにも 関わらず、いくつか必要な欠品パーツを入手すべくオークション等を利用して収集。それに費やした 時間の方が実際に作業した時間より長かったと言えた。その為、完成まで1年以上かかったと言う 長期製作車である。このRCM-630同様、重要な交換パーツが入手できないが故に完成度を 上げる事ができない機種は増加すると思われる。少なくともCB1100Rに関しては、よほど幸運な 条件が揃わない限り難しいであろう。このRCM-630は、そんな厳しい時代背景の中で製作された 希少な一台である。