台湾のCHMOTOは、これまでも数多くのRCMオーダーをして来た。台北市にある同ショップは台湾では 少数派となる大型スポーツバイク専門店で、高級なイタリア車なども販売する台湾では異色な存在である。 そんなCHMOTOは、もう10数年以上前からRCMを台湾へ輸入していた。台湾でRCMを手に入れたいと 臨むオーナーの期待に応えるべく、台湾で唯一のRCM代理店として大々的に活動していた。そんな甲斐が あってか、かれこれRCMは台湾に10台ほど輸出されている。

今回のRCM-588は、かつてRCM-456を オーダーしたオーナーの王氏であり、すなわち2台目のRCM増車となる。456は日本でベース車から用意 したCB-Fであったが、この588は台湾にあったカタナを日本へ送ってRCMとして造り込まれたものである。 前後17インチホイールシャシーで造り込んだRCM-588、先ず目を引くのは何と言ってもカラーリングだろう。 これはオーナーの王氏から「日本的なカラーで」とリクエスト頂いたもので、いくつかのデザインを事前に見て 貰い選んでもらったカラーリングである。日本的と言うのはスズキのワークスカラーを連想させる色合いで、 カタナにこう言ったペイントを施した例を日本ではあまり見かけないだけに斬新である。

外装カラーに負ける 事ないシャシーとエンジンに仕上げた事は言うまでもない。足回りは妥協なきメーカーアイテムだけで構成し、 選手権レーサーの如きビジュアルで纏めている。トップブランドパーツに対する信頼と認識は日本も台湾も 同じなのだと感じさせられる。エンジンはフルオーバーホールを基準にライトチューニングを織り込んだもの であるが、近年、スズキでのカタナのパーツ在庫が激減しており、エンジン内部消耗パーツも例外ではなく 欠品により難易度は上がった。日本では入手できなかった部品をまだ在庫があると言うUSスズキから取り 寄せるなど、これまでより厳しい工程であったと実感している。2020年代に入り、いよいよ旧車には厳しい 時代になった様で、まさか2000年にファイナルエディションが生産されたカタナがパーツ入手で困る様に なるとは、足元を油断していた思いである。

だが、旧車のカスタムバイクを愛するユーザーがいるのは何も 日本だけではない。台湾もそうだが世界中に愛好家は存在する。むしろ、このRCM-588を製作してみて 感じたのは、日本人より感覚が自由で縛りがないと思えた点だ。日本人は第三者に「こうあるべき」と押しつけ する傾向があるが海外のユーザーにはそれがない。台湾を始め、ヨーロッパやアメリカのRCMユーザーは 他者に対して寛大で、自由であり想像力に長けているとさえ感じる。そう言う意味からも、このRCM-588は 造り手側にも「初心」を思い出させてくれた、そんな印象が強いRCMである。