空冷Z系車両が世界中で枯渇している事は既に多くのユーザーが知る事だろう。只単に数が激減しただけではなく 状態の良い個体が見つからなくなっており、ここ数年で中古車相場価格が跳ね上がった事は言わずもがなである。 かつての市場価格は影を潜め空冷Z系車両はもはや高値の花になりつつある存在。今後この傾向は増々悪化の 一途を辿ると予想されている。中でもKZ1000MK-ⅡはZ1-RⅡと並んで数が少ない。1979年から1980年に 掛けての当時、生産台数が少なかった事も影響しているのだろう。もはやZ-1やZ1-RⅠも含めて空冷Z系車両は カウントダウンに入ったと言っても過言ではない。それはすなわちベース車から用意してZ系RCMを製作する事の 終わりを告げる事でもあり、事態は深刻な状況を迎えつつあった。

そんなより高額化を辿っている最中に、奈良県 在住のオーナーは夢を実現すべくオーダーメイドにてRCM MK-Ⅱの製作を決意。製作サイドとしても少しでも オーナー負担が少なくなる様、細心の配慮を行って製作に臨んだ。そんなプロセスから造られたこのRCM－522 だがオーナーは年間数万キロと言うペースで距離を延ばす乗り方だと言うから、さすがにそれに応じたメニューで 臨まない訳には行かない。当然の事ながらそれは予算にも反映されるから用途を考慮したコストパフォーマンス 重視で製作する事が最大のテーマとなった。エンジンは耐久性への配慮からマージン取ったパッケージにしたもの の、ナイトロレ－シング製エキゾ－ストにヨシムラミクニTMR-MJNキャブレターを組み合わせ、点火系もASウオタニ SP-Ⅱに変更。大排気量化や高圧縮化によるパワー追求ではなく、吸排気・点火系のマッチングを生かした仕様で 組み上げた。そのトルク＆パワーフィーリングは実用域において十分なもので、耐久性面も含めてオーナー仕様の 仕上がりになっている。

足回りも現代のパーツを採用した17インチシャシーで、走行運動性能はもちろん、修理や メンテナンスにおいても現行企画の足回りなだけにアフターパーツ入手は容易である。距離を乗るオーナーの車両 だからこそ必要な配慮とは何も丈夫である事だけではない。バイクは走れば自然消耗するものなのだから、むしろ 先々のメンテナンス性を重要視すべきであると考える。そこも含めてオーナー専用機として製作されたRCM－522。 私達サンクチュアリーへのピットインは時折必要になると思われるが、数万キロ走行してもベストコンディションを 保てるよう造り込まれた1台である。