沖縄在住のRCMオーナーは意外に多く、これまでも何台ものRCMが製作され沖縄へ納車されている。このRCM‐ 524も沖縄、それも初めてとなる石垣島在住の方からオーダーを頂いたものだ。ベースマシンは今や入手困難と なったKZ1000MK‐ⅡでRCM得意のコースである17インチシャシーを選択。目指したのはオールラウンド性を 発揮できる仕様である。

製作工程は例に違わずフレームのレーザー測定&ストレッチから始まり、サンクチュアリー オリジナルフレーム補強ST‐Ⅱにワイドレイダウン、ドライブチェーンラインの軌道確保インライン処理を施工。同時 進行でエンジンは分解洗浄され、この524ではいつものガンコートではなくオーナーリクエストからセラコートにて 耐熱塗装を施された。RCM製作におけるこのスタート段階は大変地味な工程だが、それでもここの工程だけで 裕に一ヵ月以上の時間を費やす。車体とエンジンどちらにとっても最初の基礎となる工程だけに、コツコツとしっかり 施工しておく必要がある重要な工程であるのは間違いない。むしろこの最初の工程移管でその後の完成度も変わると 言うものだから時間が掛かる事は致し方ない事であって、基礎となる最初の工程をしっかりと高い精度で仕上げて おく事が最も重要なのはある種建築的とも言えるだろう。

そんなプロセスで進んだシャシー&エンジンはRCM推奨 パーツを多用して組み上げられている。石垣島のロードシチュエーションを実体験で把握できていないから、如何なる 状況であろうと対応できる車体として仕上げる必要性がある。気候も燃調に影響するからエンジンフィーリングとて 同様に捉えねばならない。オートバイはわずかな違いから大きく変化を起こす乗り物なだけにシビアな条件である。 それでも予測に加え経験値を踏まえて選択されたパーツは期待を裏切る事のない幅の広さを持つから、完成度は 自信持てるものに出来る。RCMに元々求めて来たものであるから細心のセットアップが伴えば実現は可能であろう。

こうして完成したRCM‐524は、オールブラックのエンジン&シャシーに濃い目のキャンディブルーにペイントされた 外装カラーの組み合わせで、MK‐Ⅱらしい重厚さとコンプリートマシンならではの質感を併せ持ったルックスで完成。 車体各部に使われたレッドのワンポイント配色も高級感を損なわない遊び心で収まっており、カスタムバイクによく ありがちなチープさは見られない。派手な色使いや目立つ後付けパーツがなくとも、大きな存在感を醸し出している のがRCMの本質であり、このRCM‐524もそんな秀抜した1台として完成して石垣島への上陸を果たしている。