空冷Z系車両の世界中での枯渇はもはや多くの方達が知る所。2010年頃に始まったその現象は、2020年 には誰しもが知る状況となり、現在は更に悪化の一途を辿っている。中でもMK‐Ⅱは枯渇機種の筆頭であり 入手は増々難しくなる一方である。車両の程度は悪くなり価格だけが上がっており、それも数少ない中からの 選択肢であるから本当に厳しい状況である。ベース車の価格高騰は、元々数多くのオーバーホールやレストア 作業に多大な時間と予算を投入して製作して来たコンプリートバイクを直撃した。ノーマルレストア車ではなく、 運動性能の飛躍的向上を目的として製作されるカスタムコンプリートバイクは特別な存在で、ベース車の価格 よりも施されるメニューの方が高額なのだから致し方ない事であろう。

そんな成り立ちにくい時代に在っても 熱意を持った人達はいるもので、このマシンのオーナーもオーダーメイドにてRCM‐546の製作を実現させた。 ベース車価格が高額化したとは言え、RCM製作に施すべきメニューを減らすわけには行かない。むしろ近年 製品化された新しい優秀なパーツ達や新技法は増えているから、自ずと製作メニューもプラスの傾向である。 良いものを積極的に取り入れるのはRCMにおいて定石であり、カスタムコンプリートバイクがノーマルと大きく 性能を異とするその源であるとも言える。そんな現代の水準を手に入れたこのマシンは、先鋭的な17インチ ホイールシャシーで造り込まれている。圧倒的パフォーマンスを発揮する上で必要不可欠となる前後タイヤに 最新ハイスペックラジアルタイヤを装備できる事、それには17インチホイール化が不可欠であり、フレームにも スペックに合わせた強化対策が施されている。

足回りパーツも性能バランスをコーディネートしており、走りは ノーマルと比較できない程に違うマシンへと生まれ変わっている。それはマイペースな街乗りから速度域の 高いワインディングや高速まで幅広さを持ったものであり、扱い易さ、乗り易さと言った大事な要素を犠牲に する事なく実現している。空冷Z系車両は今や容易に買えない機種となってしまったが、普通のZでは満足する 事ができない、そんな要求と情熱がこのRCM-546を実現させたと言える。ベストコンディションで造り込まれた Z系RCMの真の性能を長く楽しんで貰える、正にそんな仕上がりの1台である。