KZ1000MK-Ⅱと言えば角Zの代表格である印象を持たれる方が大半であろう。正しくカワサキの旧き 時代の武骨さを象徴した様な機種である。そんなMK-ⅡをベースとしたこのRCM-591は前後17インチ ホイールシャシーで製作。セパレートハンドルのフロントマスクが武骨さに反してスポーツ志向である事を 物語っている。ダークカラーを多用した趣の姿でありながら6速クロスミッションを組み込むなど走破性への 追求はオーナー希望の仕様であり、拘りのマシンスペックとなっている。

力が注がれたエンジンの内燃機 加工は全て精密精度を誇るディンクスが担当。エンジンは如何なるパーツを用いたとしても最後にもの言う のは内燃機加工の精度であるから、ここを確実に仕上げる事こそオーバーホールの完成度と言えるだろう。 その点においてディンクスは期待に応えた仕事をしてくれるだけにRCMのエンジンクォリティーは高度だ。 5.5mmステム径ビッグバルブの採用も先鋭的であり、完全燃焼と低振動化に欠かせないツインプラグの 導入など、オーナーは重要なチューニングに対して見識のある人物でもあった。もちろんトロコイドオイル ポンプの採用も忘れてはいない。

そんなパワーユニットを搭載したフレームは、サンクチュアリーオリジナル フレーム補強STAGE-Ⅱを施し、前後足回りパーツを正確にフィッティングしたローリングシャシーである。 世界選手権Moto-GPに採用されるOZレーシングホイール・OHLINSサス・Bremboブレーキと、メーカーも 最高峰に拘った上級仕様でRCMに相応しいチョイスだ。この様にエンジン＆シャシー共にマストコースで 製作して行く事で完成度はもちろん、自ずと存在感まで変わって来る。これがカスタムコンプリートマシンの 醍醐味ではないだろうか。数値の精度に拘り、アライメントの性格さに拘り、パーツのメーカーにまで拘る。 それらを妥協すれば走破性は犠牲になり、同時に姿形とて違和感を感じるものになると言うものである。

近年、空冷Z系車両は世界的に枯渇し中古車相場価格は跳ね上がってしまった。値段の高騰もさながら、 状態良い個体が激減したのも同時に起こった現象である。それでも空冷Zを臨むオーナーは後を絶たず、 未だにZ系RCMの問い合わせは続いている。いずれは所有されているベース車を持ち込んで貰わないと 製作できない時が来るのは間違いないが、まだ可能な今、夢を実現されたオーナーの喜びはひとしおかと 思っている。KZ1000MK-Ⅱでの拘りのオーダーメイドRCMなのだから、それは殊更だと言えるだろう。