仕事の関係で普段は台湾に在住しているオーナーから依頼を受けて製作されたRCM-599 MK-Ⅱ。 日本人のオーナーながら海外からオーダーを頂いた初めてのケースである。ベース車となったマシンは 増々枯渇し切った感が強い一方のKZ1000MK-Ⅱで、前後輪17インチホイールシャシーコースでの 造り込みである。見た目にすぐ気付くのはスチール製のショート管で、17インチのローリングシャシーに ショート管と言うのはあまり見ない組み合わせと言えた。過去全くなかった訳ではないが、このRCM- 599においては、前後にOZレーシングホイール・OHLINSサスペンション・ブレンボラジアルマウント フロントキャリパーと、現代のトップレーシングシーンで活躍している世界一の逸品だけで構成されて いるから、先鋭的なスポーツ志向に70年代テイストが組み合わさったと言う印象である。

最もそこには 寸法的相性の悪さもあり、例えばスイングアームの幅がワイドなリアタイヤに適した17インチ専用だと、 マフラーのテールパイプにアームが干渉してしまう。市販されている普通のショート管は全ての箇所が 溶接されたワンピース式な為、アームとの干渉を逃がそうとするならテールパイプを切断して角度を変え 再溶接してテールパイプ軌道を変更する加工が必要になる。溶接後は耐熱塗装のし直しが必要だし、 マフラーステーも新規に設けなければならないから実は意外に大掛かりな作業である。

そこで今回は ナイトロレーシング製クラシックシリーズショート管を採用。このナイトロショート管はワンピースではない 組み立て式構造が故に、組み立て部の遊びを利用してテールパイプ軌道を外側に向ける事が出来る。 スイングアームとのクリアランスは僅かではあるが、加工無しで応用できるため時間も予算も大幅に 低減できた。ショート管と言うキャラクターでありながらもワイドなスイングアームに応用できる訳だから、 17インチホイール化されたシャシーにも容易に取り付けが出来る、そんな利便性を備えたマフラーで ある。

この様な個性的一面を有したRCM-599であるが、サンクチュアリーのオリジナルフレーム補強 ステージⅡを施したシャシーには従来式ながらも6速クロスミッションを奢ったエンジンを搭載。ヨシムラ TMR-MJN DSFキャブレターなど構成される大半のパーツは現代的な仕様だ。ショート管との相性も 悪くなく、初期セッティングだけの状態でも十分トルクフルで実用的なパワーを発揮した。事あるごとに かくあるべきと既成概念がささやかれるご時世だが、自分のマシンは自分だけのアイデンティティーで 造ると、そんな信念めいたコンセプトさえ感じるRCM-599 MK-Ⅱ。先に所有していたZ-1を納車時に 入れ替えて、今はそのZ-1もアップデートを図っている。