Z系の中でも武骨さを代名詞とする存在のKZ1000MK‐Ⅱ。男性イズムを象徴しているかの如きMK‐Ⅱだが、 このRCM-611のオーナーは女性である。フルオーダーメイドでの製作で拘ったのはハイエンドパーツの採用と 全体のカラーコーディネートで、女性ならではの繊細なセンスが伺える秀抜した出来栄えである。

前後ホイール には世界選手権MOTO-GPで最も採用率の高いO・Zレーシングホイールを使用。Brembo製ラジアルマウント CNCキャリパーやラジアルポンプマスターシリンダーなど制動系においても妥協はない。最高峰の足回り部品 で構成しており、世界中で高く評価されている選ばれしメーカーパーツだけが持ったオーラを纏うビジュアルだ。 廃番となっているナイトロレーシング製チタンメガホンマフラーも、わざわざワンオフして取り付けた程の拘りで、 このMK‐Ⅱに対するオーナーの情熱が垣間見えると言えるだろう。そんなRCM‐611のスペックは17インチ ホイールシャシーで造り込まれたロードスポーツバイクとしての本質である。軽快なハンドリングに扱い易い トルク特性のエンジンなどバランス良い仕様で製作されている。

スポーツバイクと言うと誤解を受け易いのだが、 速さには扱い易さと言う要素が欠かせないもので、故に速さイコール乗り易さの関係性が成り立つ。つまり 車体はもちろん、エンジン特性とて重要だと言う事である。そんなエンジンの調子を裏付けるのが内燃機加工 である。このRCM-611の内燃機加工はサンクチュアリー本店の母体となるノーブレストグループの一つ、 ディンクスが担当している。ディンクスは多気筒エンジンの精密加工を得意としており、クランクシャフトを始め シリンダーボーリングやバルブガイド＆シート加工など、オーバーホールに必要不可欠な全ての内燃機加工を 全て内製で仕上げている。

特筆すべきは最新鋭の電子制御マシンH85Aを用いたシリンダーホーニングで、 1000分の1ミリ台でのクリアランスを4気筒間で追求している。内燃機加工がより精密に仕上がれば自ずと 良いエンジンに仕上がるから、このセクションでの完成度は軽視できないだろう。

こうして完成したRCM-611は 遠く南の地域に在住されるオーナーの元へと納車された。空冷エンジンにとっては過酷な平均気温の高い地域 でがあるが、しっかり造り込まれたエンジンと優れた冷却機能であるから環境に負ける事無く走り切ってくれる。 見て良し乗って良しと、多角的に楽しんで貰える、そんなRCMである。