車両お持ち込みでのRCM比率が増えた近年。空冷Z系車両を始めとする所謂”旧車”の入手が難しく なった今となっては、車両お持ち込みは逆にありがたい位である。持ち込み車両の場合、ベース車の 状態がイコール重要な要素になって来るわけだが、これがまたどの車両もコンディションが異なっており 全くもって同じ条件だった試しがないのも事実だ。大切なのは結局フレームとエンジンの二つなのだが、 ある程度外見的に判断できるフレームに対し、エンジンは見極めが難しい。普通に走れていたとしても 実は大きな問題が潜んでいたと言うのが大半である。

チューニングやカスタマイズのプランは見積もりが 出せても修理・修復はエンジンを分解してみないとわからず、そこが個体により皆異なっている事が多い。 このRCM-633も、エンジンを分解してみたら問題多数と言う個体であった。分解前には至って普通に 乗れていた車両であったが、本来M6のカムホルダーボルトがM8になっていたり、精密に仕上げられて いるはずの内燃機加工の数値に問題があったりと、いずれも印象に強く残る多く問題が見つかっている。 チューニングもオーバーホールも、それら修理・修復を正確に施した上でのメニューとなるから、先ずは そこから着手。内燃機加工部門ディンクスでの機械加工に修復時間を費やした。ものによっては修復が 不能な場合もあるが、幸いにもこのRCM-633のエンジンは全てしっかり修復を行う事が出来ている。

その後の展開は、腰下クランクシャフトのフルリビルドにNew6速クロスのEVOシステムミッション、そして 安定した油圧を提供するトロコイドオイルポンプに加え、循環系統に気泡を送らない深底オイルパンを コンビネーションでアップデート。腰上は実用性も考慮した範囲のサイズで選定したビッグボア化を基軸に ハイカム・ビッグバルブ・ツインプラグとフルメニューを施工。厳密に言えばそれぞれ細かく特徴があり、 タイミングやクリアランスなど繊細さを伴い組み込まれている。

完成したエンジンを受け止めるシャシーは 17インチワイドホイール仕様で、世界のトップブランドに冠するメーカー品だけで構成されたゴージャスな 足回りだ。合わせてフレームも補強＆各部加工を精度に拘り行っている。このRCM-633のオーナーは、 実はこの633を製作納車した後、2台目となる70年代風の軽いカスタムMK2の製作依頼を頂いており、 それも既に納車済みだ。今オーナーの元にはRCM-633と軽いカスタムMK2の2台があり、それらを 見て、乗り比べて楽しんでいる。RCMの性能を知る意味でも軽いカスタムMK2の存在は意外に役立って いるのかも知れない。