KZ1000MK-Ⅱと言えば、枯渇しつつある空冷Z系車両の中でも高額な機種である。一時よりは 旧車市場の相場価格は落ち着いたものの、それでも絶対的に数が少ないという点において未だに 入手厳しい状況である事に変わりはない。このRCM‐637が製作された2024年はベース車の値段が 高いだけでなく部品の価格も著しく値上がりしている。原材料費やエネルギー費の高騰、円安為替など 様々な理由が背景にあって起こった値上げラッシュであったが、この部品の値上げも高額化に繋がる 軽視できない要素であった。年を追うごとに年々厳しい時代へと変わっているが、それでも自分の夢を 実現して行くRCMオーナーには感服である。

施された作業はRCMらしいコースで、前後輪17インチ ホイール仕様で製作された。フレームはレーザー測定ストレッチ修正後、サンクチュアリーオリジナル STAGE-2補強にリアサスワイドレイダウンとドライブチェーンラインオフセット軌道インライン処理を施し、 選手権で採用されるOZレーシングホイール・OHLINSサス・Bremboブレーキの世界最高峰メーカー アイテムに拘った一流パーツだけで構築。足回りの色合いもブラックトーンで構成しており重厚感と 貫録を感じるビジュアルである。エンジン内燃機加工はDiNxによるもので、手を抜かない精密精度で 仕上げている。この内燃機加工こそ完成したマシンの調子に直結するだけに、内燃機加工に特化した 専任技術者だけで編成されているDiNxの仕事は非常に信頼が高い。

そんな完成度高いエンジンに 取り付けられた吸排気系はナイトロレーシング最高峰エキゾーストであるウェルドクラフト3Dチタンで、 キャブレターはヨシムラTMR-MJN DSF仕様。RCMらしいコンビネーションの組み合わせでエンジン レスポンスはノーマルの比ではない。スポーツバイクとしての条件を満たしたスペックであるが、実際 乗ってみれば街中からツーリングまで幅広い扱い易さを発揮しているからオールラウンドなキャラクター なマシンであると言って良い。オーナーからは納車後「凄く気に入っている」とのコメントを頂けており、 造り手側としてこれ以上嬉しい言葉はない。