セパレートハンドルの引き締まったマスク回りからスポーツ路線を感じさせるRCM-563。高知県在住の オーナーからオーダー頂いたこのZ‐1はソリッドブラック単色で仕上げられストイックなRCMとして完成した。 ブラック単色カラーから感じられるのは70年代風のイメージだが、車体各部を始めとする装備は現代的な 仕様で、見た目とは裏腹のスペックを隠し持っている。前後17インチホイールで組み上げられたローリング シャシーは現行ハイスペックラジアルタイヤを装着できる規格サイズで、前後サスやブレーキなど関連する パーツは全て17インチホイール仕様にマッチングさせたものである。キャリパーこそアキシャルマウントの キャスティングを用いているが、左右マスターシリンダーにはBrembo製のラジアルポンプをチョイスする等、 操作系部品をぬかりなくしている点などはオーナーの走りに意識を配っている志向を感じた。

エンジンは 1mmオーバーサイズピストンを用いてオーバーホール重視で組み上げたライフパッケージコースだが、 高圧縮化するなど排気量だけに限らないアップデートを図っている。そこに点火系ASウオタニ製SP-Ⅱと ミクニ製TMRキャブレターを組み合わせ、ナイトロレーシング製チタン手曲げマフラーをマッチング。トルク& パワーは単なる純正1mmオーバーサイズピストンのそれとは異なり、見違えるほどに元気な特性である。 大排気量化した訳ではないもののトルク&パワーは大きく向上しているから、エンジン自体の発熱量は自ずと 増えている。決して危険領域の発熱ではないが、空冷エンジン特有の熱ダレ対策として、トロコイドローター式 ハイプレッシャーオイルポンプに換装済み。この辺りの熱対策意識も万全である。

この様に一見しただけでは 70年代風のZに見えるが、その中身は現代的なハイスペックで仕上げられているRCM-563。実はオーナー から見積もり依頼を頂きオーダーに至る経緯の中で、最初から1年かけて製作をと言う要望も頂いていた。 ここ数年で空冷Z系車両が世界的に枯渇し、中古車相場価格も軒並み上昇したが、オーナーがオーダーを した1年前と今とで更に価格は高騰しており、全く同じ仕様の車両を製作しても今では何十万円も高くなって しまう訳であるから、そのような見方からもオーナーの作戦は見事に的中したと言えるだろう。もはや空冷Z系 車両は早いもの勝ち状態となっているから、時間をかけて製作する方法は有効である。

最もRCMは、元々 3ヵ月から半年と言う非常に長い製作時間を要する車両だから半年が1年になるだけの事であって、これが 大きくネガティブな条件だとは限らないだろう。考え方・捉え方の違いなのだろうが、上手に手に入れるやり方 である事は間違いない。今や空冷Z系車両は高嶺の花であり、ましてやRCMともなれば尚更であるから、 最初から1年越しを希望され良い結果に繋がったマシンである。