空冷Z系RCMのオーダーは以前からも主流機種で数が多かったが、2020年頃よりそれは更に増加傾向で 右肩上がりな状況となった。だが、オーダーが増えれば増えるほどベース車両の調達は困難になって行く。 以前からベース車両を数多くキープしていたとは言え、調達よりオーダー数の方が遥かに上回れば在庫一掃 となって見る見る状況は変わってしまう。サンクチュアリー本店で数年前より買い溜めておいたベース車も いよいよそんな新陳代謝期を迎えていた。

そんな厳しい時期でありながら、夢を実現したいと熱意ある方達は 後を絶つ事がなく、このRCM-581 Z1も遠く兵庫県から問い合わせを頂きオーダーを頂いたRCMである。 見て印象としてもお解りだと思うが、ノスタルジックさを全体に残しつつも部分的に現代的な要素を取り入れる コンセプトで製作されたこのマシン。旧さと新しさを融合させているがその造り込みは意外にも大変なものだ。 前後輪は18インチホイールだが、150以上のリアタイヤを履かすにあたりチェーンラインは6mmオフセット している。すると当然リアサス左右の取り付け幅もノーマルより広げなけばチェーンと左リアサス内側が干渉 するからレイダウン加工時に幅をワイド化。SCULPTURE製18インチ用スイングアームであればワイド化した リアサス幅に適合しておりそこは相性良いものの、ショートタイプのマフラーが今度はスイングアームに干渉 してしまう。

そこでマフラー後部を一度切断し、角度を変えてアームをよける軌道に変更。あわせてマフラー ステーもワンオフした。またノーマルステップバーを用いて楽なポジションのステップKITを製作しているが、 リアマスターシリンダーの取り付けステーとプッシュロッドのワンオフなど、ここでも単品製作が連続している。 何気なく出来上がっている然として見えるが、実は通常の作業よりもワンオフが多く取り入れられ完成している。 ノスタルジックな路線でありながらもクラッチリリース構造は油圧化し、ブレーキキャリパーもBrembo製を採用。 左右マスターシリンダーもBremboラジアルポンプを用いて実用性重視としている。キャブレターもアイドリング 安定感とレスポンスに優れるTMRキャブレターをチョイス。点火系はASウオタニSP-Ⅱで、ライフパッケージ エンジンながらも力強いトルクと伸びのあるパワーを実現。

オイルクーラー性能を使い切るべく、トロコイド式 ハイプレッシャーオイルポンプKITも迷わず装備した。RCMは17インチホイールでのスポーツ志向ばかりと 思われがちだが、実はこのRCM-581の様に当時感を全面に出した仕様も製作している。それは旧さイコール 性能低下と言うものではなく、要所をパフオーマンスアップさせる事で現代に適合させた元気に走れる仕様でも ある。見た目はノスタルジック、走りは現代より。17インチ車で培っているノウハウは18インチにも応用できる から見た目以上の走りを期待して良しで、オーナー好みの仕様として完成した1台である。