車両の枯渇が浸透した感のある空冷Z系車両。Z-1は当時の生産台数が多いとは言え、人気の高さから 中古車市場では依然高額で取り引きされている。価格帯も問題だが、同時に車両自体の老朽化が著しく 進んでいる事も深刻で、程度の良い車両は過去に何かしらレストア等の作業を施されていると判断できる。

メンテナンスのみで完調を維持している個体は極めて僅かな台数であろう。このRCM-602も正にそんな 車両価格が高騰し続ける渦中でオーダー頂いたZ-1である。ノーマルは運動性能が脆弱だからフレームと 足回りをカスタマイズする事は前提条件。出力特性もキビキビ元気に走れる仕様にしたいから吸排気系と 点火系をアップデート仕様へ。エンジンはカリカリではなくオーバーホール重視と、RCMとしての定義を 満たす内容で製作が開始された。オーナーは前々からいつかはZ-1をと考えていたが、実は今回購入の 時期を早めて決断をしている。車両価格の高騰があまりにも早く推移していた事からの判断であったが、 とは言え予定よりも早く、予算に限りがある段階での判断。

そこで一考したのが純正パーツを流用し予算を 抑えたマシンを造る事であった。Fフォークや前後ホイール、ブレーキ回りなど全てZRX1200の純正中古 パーツを用いて大幅なコストダウンを実現。ZRXのFフォークは全長が短い為そのままでは車体姿勢に 問題が出てしまうから延長アダプターでディメンションを補正。適切な寸法にする為の部品を追加したと してもコストは抑えめに出来ている。だが一方で、フレームの測定ストレッチやエンジンオーバーホール等、 一切妥協すべきでない課題は多くあり、そこは手を抜く事なくしっかり施している。フレームは後々になって 作業するとなると車両を全分解しなければならないし、エンジンは精密内燃機加工などを疎かにすれば たちまち調子を崩すから、これまた再作業するはめになるだろう。

こう言った要所に関してはコストダウンを する事無くしっかり仕上げる事で完調な一台が完成する。マシンが完調でさえあれば、例え純正流用の 足回りでも普段使いに支障はないから気持ちよく乗れる。フレームとエンジンが完璧なら足回りは後々容易に アップグレードが出来ると言うものなのだ。この様に、部分的にコストダウンを図った造りであっても、先ずは 完調な車両を手に入れ後々アップグレードを図って行くと言うのは非常に有効であると思われる。近い将来 空冷Zそのものが手が届かない価格になる事もあり得るのだから、オーナーが一考した今回のプランは 賢い手法だと言えるだろう。今後のアップグレードが楽しみなRCMである。