1970年代、欧米をメインに販売されていたリッタークラスエンジンの空冷Z系車両達。当時海外だけに販売されて いたそんな空冷Zも今では激減して入手が厳しい時代を迎えた。今回のRCM-564は、Z1-Rをベースにしたもの。 当然のことながら、今では個体が見つからず中古車相場価格も高騰してしまった機種である。ベース車が高額に なると、オーバーホールやレストア、カスタムも同時進行で行うコンプリートマシンRCMにおいては条件が厳しく、 自ずと高額化する傾向である。ひと昔前なら何とかなったものも今では実現させるだけで精一杯と言うのが現実だ。 となると、コストパフォーマンス重視でマシンを造る。このテーマで製作されたのが正にこのRCM‐564であった。

海外から輸入されて来る空冷Z系車両の中にはエンジンの載せ替えが行われている車両も多い。日本より国土が 広い欧米では走行距離も伸びやすく、エンジンが壊れる事もよくある事だったのだろう。生産されてから長い年月が 経過しているのだから壊れたエンジンを修理するのではなく、生きている中古のエンジンに載せ替える方が安くて 早いと判断された個体は相当数あるだろう。事実、輸入されて来るZ系車両でエンジン換装されているものは多い。 いわゆるフレームとマッチングしている車両は一部だ。今はヴィンテージバイクとしての価値が上がったが故に、 マッチングうんぬんと言う話題も聞くが、昔はそんな事を気に掛ける事は一切なかったのである。だが、逆に言えば エンジンがマッチングしていない、それも原動機形式まで異なるとなると、実は以外にもリーズナブルな価格帯で 買う事が出来る。

たまたまZ1-RにKZ1000のエンジンが搭載されていたベース車両があり、もちろんオーナーの 同意を得た上でRCM-564は実現された。車両価格を抑え、かつ使用するパーツもコストダウンを図る。パーツは 先々自分好みに変更できるがベース車は雲の上の存在になるかも知れないから、とにかく今何とか成り立たせる と言う考え方である。とはいえ、RCMとしてのクオリティーは下げる訳には行かないから、フレームやエンジン、 そして電装系などオーバーホールやレストアのメニューに手抜かりはない。先ずは手に入れる事に着眼したのだが 手に入れた愛機が走らなかったらその価値は一気に落ちると言うものだから、作業だけはキッチリ熟した内容で 仕上げられている。実現させる為に原動機型式は妥協できても、造り込みや仕上がりに関しては妥協をしない。 このコンセプトがあるからこそ、このマシンは立派なRCMである。原動機型式が違う事に拘りがない人も数多く 存在しており、オーナーの思考がよく見て取れる、そんな1台である。