近年、RCMを複数台所有されているオーナーは意外にも多い。空冷Z系にNinja、カタナやCB-F系など、多様な 機種で3台あるいは4台以上と言うオーナーすら存在するほどである。複数台所有して頂けるのは最初に購入された RCMを気に入って頂けている事の裏付けでもあり、製作サイドとしては正しく冥利に尽きるもの。このRCM-568の オーナーは元々RCM-499 KZ900を購入され、その後今回の568を製作依頼されたのだが、568を製作している その半ば、更にRCM-598 Z-1のオーダーを追加されて、その598の製作が進む最中に今回の568は納車された。 何やらややこしい話だが、立て続けにZ系RCMを3台それぞれラグを入れてオーダーされたと言うエピソードである。 2台目となったこのRCM-568の特徴は何と言ってもエンジンである。

1台目のRCM‐499がベーシックな仕様だった だけに今回はエンジンに総力注ぐテーマで製作されている。オーバーサイズスリーブに入れ替え、ビッグボア化を 施してST-Ⅱのハイカムをセット。ハイカムシャフトの性能を生かすべく、吸排気ポートを拡大研磨して充填効率を向上 させている。動弁系は月並みなビッグバルブではなくステム径5.5mmの軽量スペシャルビッブバルブをチョイスした。 この軽量ビッグバルブはこれまでも数多く採用して来たが、バルブ単体重量が軽い事で高回転時でのバウンス防止 効果が高く、またバルブスプリングの選択幅も広がる事から実は非常に優れたバルブであると言える。

Z径RCMは 今後このビッグバルブが中心で多用して行くのではとさえ思わされる安定感がある。吸排気系の充填効率が大きく 変わり更に圧縮アップも加わって燃焼室もツインプラグ化。点火時期の調整幅も広くなり、キャブレターセッティングに 至るまでコンセプトを見据えたパッケージだ。つきものである発熱にはトロコイド式ハイプレッシャーオイルポンプで対策。 大型オイルクーラーのコア層全てをオイルが流れる事で油温の低下は目に見える違いである。そんなユニットから 生まれた動力は6速クロスミッションを経由してリアタイヤ駆動へと伝達。フロントスプロケットをオフセットする事なく チェーンラインを軌道変更できるEVOシステムとのハイブリッド6速クロスである。

ちなみにこのRCM‐568、エンジン 以外にも力が入っている。アッパーカウルのフレームマウント化やスイングアームスタビライザーの追加など、DIYでは 出来ないカスタムメニュー満載で、車体の方も相当凄い仕様だ。納車後オーナーはRCM-499と比較し、そのトルク& パワーのあまりの違いに驚いており、オーナーの期待に応える事が出来たのは製作側として本当に嬉しい限りである。 次のRCM-598 Z-1はツーリングコンセプトで製作される18インチホイール仕様だが、エンジンパワーの見劣り感が 露骨に出ない様、ある程度このRCM-568に寄せたパワーユニットを目指している。この568が今やオーナーの基準に なってしまったとも言える1台である。