枯渇しきった感の強い空冷Z系車両達。イギリスやドイツ、オーストラリアなどの諸国でも人気が高いZ系車両は 状態良い個体を見つけるのが難しくなり、傷みが酷い車両でも高額取引される様になった。本気で欲しいと考えて いたユーザー達の駆け込み需要が始まったのは2019年頃からで、従来30台前後の年間製作台数だったRCMも 軒並みオーダーが集中し、今では40台近い台数を製作している。機種はZ‐1とMK‐Ⅱ、そして今回のZ1‐Rが 大半を占めており空冷Zの勢いを改めて知らされている。だが、ベース車両はいつまでも提供が出来る訳ではない。 近い将来、実現させたくても無理な時代に入るであろうと予想をしている。そんな時世が故に「夢を実現させたい」と 言うオーナーの想いから、このRCM-577も造られた。

自分が理想としてる姿・形、そして走破性能を求めてパーツ チョイスと仕様を決めて行く。最初の段階から途中何度もメニューが見直されたがオーダーメイドとは本来そういう 資質の行為であろう。アッパーカウルのフレームマウント化はフレームがパウダーコートに出される直前まで検討 され決定。ブレンボパーツの仕様やスイングアームへのスタビライザー追加なども試行錯誤の上でアップグレード して行ったメニューである。エンジンはオーバーホール後の完調さと、吸排気&点火系の変更から得られる出力で 充分と判断されたが、11インチ13段のラウンドオイルクーラーとトロコイド式ハイプレッシャーオイルポンプだけは 必須と捉えて組み込んでいる。前後17インチホイールで組まれたローリングシャシーはスポーツ性能を求めた コンセプトで、Z1-Rのカフェレーサー感も加わりヨーロッパ車の如きルックスだ。

この傾向はZ1-RのRCMに多く 見られる方向性だが、Rの称号に相応しき機能と存在感を与えたいという心理は理解できる。Z1-Rと言う機種 そのものが本来スポーツ路線のバイクであっただけに高性能化への追求にアレルギーは少ないと言えるだろう。 これから先、果たして何台のZ系RCMが製作できるのか、それはもはや造り手側にも予測がつかない。一つだけ 断言できるのはそう遠くない将来、ベース車から用意してコンプリート化する事は不可能になるであろうという事だ。 車両を持ち込み頂ければ実現は可能だが、中古車自体、その個体数は減るばかりであるから結局は厳しい。この 現象は悪化する事はあっても改善される事はない。

50年も昔に生産終了になった乗り物なのだから当然な事だ。 難しい局面を迎えた空冷Z系だが、RCMは今でも元気にキビキビ走れるZにするべくモディファイを加えている。 精度の高いエンジンオーバーホールとノウハウを生かしたチューニング手法で再生果たしたZ1‐Rの走りは、比較 できる機会があったならノーマルと乗り比べして貰いたい違いがあり、オーナーが想像していた期待を裏切る事なく 造り込まれたZ1-Rに仕上がっているのは体感でわかるもの。オーナーリクエストを重視して完成した、そんな趣の ある1台である。