生産されてから50年もの年月が経過した空冷Z系車両達。長年に渡る経年劣化は目に映る部分 だけでなく内部においても機能低下が認められる。また半世紀前の設計と言う事もあってか、その 走破性能の低さが現代のバイクと比べようもないのは致し方ないと言えるだろう。RCMはそんな 旧車を単に再生させるだけでなく、現代のマシン達に近い水準を求めてカスタム・チューニングを 施しているトータルコーディネートをコンセプトとしたものである。

ハイスペックラジアルタイヤを 履かすべく前後輪ホイールは17インチ化。走行性能を大きく左右するタイヤをアップデートさせた 以上フレームへの強化は欠かせない。過剰補強は逆効果な上、いたずらに重量増となるから 質実な補強であるステージ2をチョイス。専用治具を用いた高精度なレイダウン加工や、ワイドな リアタイヤに合わせてオフセットされたドライブチェーンラインの軌道加工等、必要なメニューを 正確に精度よく施している。そんなフレームに搭載されたエンジンは、スペックありきの仕様では なく精度ありきに拘ったもの。

この精度とはすなわち、交換する個々のパーツ寸法や特徴であり、 そして何と言っても内燃機加工である。ピストンとシリンダーのクリアランス一つ取っても奥は深い。 ホーニング後のスリーブ内径は上・中央。下と部位によって極々僅かに径が異なる。また気筒間に おいてもその誤差は出る。基準数値が100分の1と言う精密性を問われるだけにホーニングの 仕上がり精度は極めて微細だが、ここが使用するピストン性能を決定づけるだけに重要である。 シリンダーヘッドのバルブガイドやシートカットにおいても同様で、入れ替え後のガイドの角度や 芯の位置がシートリングと偏心しないのが理想である。シートカット後のバルブセット位置も大事で 燃焼室の容積やタペットシムの厚さにまで影響して来るから、4気筒全てのバルブが足並み揃えた 状態になっている事が大事である。

これら内燃機加工の精度は専門の技術者と優れた専用機が あってこそ始めて成し得られる。RCMの内燃機加工をディンクスで行っているのはこの点にあり、 ディンクスへの信頼度は揺るぐ事がない絶対的なものである。正確に加工されたフレームに、 優れた足回りメーカーパーツ、そして高精度な仕上がりの内燃機加工により、生産されてから50 年もの年月を越えた空冷Zでも走りは変貌を遂げる。重要部さえ抑えてしまえば後は乗り手の 好みでスタイルを楽しめば良い。例えばこのRCM-623の様にノンカウルのZ1‐Rにするのも、 その一つと言えるだろう。