現代版のZとして人気を博すZ900RS。空冷Zに似た外装を身に纏いながらも鋼管トラリスフレームに搭載された エンジンはZX-9Rエンジンをベースとした水冷4気筒エンジンである。リアサスがモノショック構造である事もあって 乗り易さと軽快な走りは正に現代のバイクそのものである。

そんなZ900RSはアフターマーケット市場も活性があり、 個性的なカスタム車をよく見かける。サンクチュアリーでもZ900RSのRCMを造ろうと、遅ればせながら2020年頃 より製作を着手するが、普段からのRCM製作に追われ2年以上と言う長い時間をかけてようやく完成果たしたのが、 このRCM-534である。コンセプト無しにRCMを生み出すのは難しい。ただ手を加えただけのカスタムマシンでは 見ていてもの足りなさを感じるものだから、RCMに相応しいコンセプトとして ”高級感”と”スポーツバイク”の2つを テーマに掲げて臨んだ。

カスタムされた沢山のZ900RSを見て来たが、ドレスアップばかりが中心で機能パーツを 軽視している傾向を感じた。装飾は楽しい行為だし、何よりカスタムは個人の自由なのだからそこを否定する考えは ない。ただRCMとして個性を作り出すなら真逆の方向、すなわち装飾パーツを敢えて使わずノーマルのままとする。 逆にDIY的には出来ない大掛かりなハードカスタムだけに絞る事とした。結果、デコレーション的な要素は薄くなり コンセプトの一つであった”高級感”が演出できた。もう一つのコンセプトである”スポーツバイク”については、素材と なるZ900RSのキャラクターがネイキッドツアラーである事から、元々の素材の個性を活かしつつスポーツライドが 可能なイメージでカスタマイズする。

フレームやエンジンはそのままに足回りパーツ中心でアップデートする方向だ。 フロントフォーク回りはステアリングステムやFフェンダーまでセットとなった「OHLINS倒立ExMパッケージ」を開発。 前後ホイールにはもちろん、現在ロードレース世界選手権採用率ナンバー1の最高峰ホイール「O・Zレーシング」を 装備し、前後ブレーキパーツには「サンスター」や「ブレンボ」と言ったここも世界に名だたるメーカー品を採用。これら パーツメーカーをどこにするかの選択だけでも”高級感”はより強調される。当然、世界最高峰と謳われるメーカーの 製品なのだから言わずもがな高性能でもあり、上手く組み合わせてやる事で”スポーツバイク”の資質も向上した。

他にも「SCULPTURE製スタビライザー付きスイングアーム」「ナイトロレーシング製ウェルドクラフトチタンマフラー」 同ナイトロ製の車体に沿わせた本格的フォルムの「アルミダウンチューブKIT」や「ラウンドワイドラジエータKIT」など、 このRCM-534を製作にあわせて同時にRCMらしいハードパーツ達が続々と開発された。こうして第一形態の完成 を迎えたRCM-534はオリジナルパーツの開発に貢献したテストベッド車両としての存在感が強い。だが、今後は より深いエリアとなるエンジン、そして造形においてもDIYではとても出来ない大掛かりな加工を試み、第二形態に 向かってのチャレンジは続くであろう。今後の進化に期待を込めたZ900RSのRCMデモ車である。